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PROJECT

『北海道トンネルプロジェクト』
リーダーインタビュー

木部建設では現在、新函館北斗から札幌までをつなげる北海道新幹線の延伸工事という大規模なプロジェクトに参画している。工事区間の80%をトンネルが占める中、木部建設が加わっているのは最長の渡島(おしま)トンネル。この難度の高い工事の施工管理を担う大芝所長と藤原副所長に、現場でのリアルな声を届けてもらった。

プロジェクト概要

東京と北海道を高速鉄道で結ぶため、東北新幹線の先の路線として建設が進んでいるのが北海道新幹線。現在、実施が決定している区間は新青森〜札幌間の約361kmで、2016年3月に新青森〜新函館北斗の間が先行して開業した。さらに道庁所在地の札幌を目指し、残り約212kmの建設が進んでいるが、その80%ほどがトンネル区間となっている。
今回登場する2人が携わっているのは、新函館北斗駅に近い渡島(おしま)トンネルで、全長32.675mと鉄道の陸上トンネルとしては国内最長になることが最大の特徴。広大なだけに工区を7つに分けて工事が行われており、木部建設は最も札幌寄りの上湯工区5,310mの施工を担っている。
函館から札幌までの鉄道での移動は、現在は特急で3時間半ほどを要するが、北海道新幹線の開通により1時間13分と大幅に短縮。東京〜札幌間も5時間ほどで行き来できるようになる。札幌までの延伸開業は2030年度末を予定している。

MEMBER

  • 大芝 隆秋

    TAKAAKI OOSHIBA

    渡島工事事務所 所長
    1984年 入社

  • 藤原 裕

    YUU FUJIWARA

    渡島トンネル工事事務所
    2008年 入社

#01

このプロジェクトに加わるまでの 経緯や役割を教えてください。

  • 大芝:直前まで洞爺湖の東湖畔トンネルの工事所長を務めていたのですが、社長から直々に「今回のプロジェクトの所長を頼みます」と告げられました。正直なところ「自分に務まるのだろうか?」と思いましたよ。何しろトンネル全体の長さが32km以上もあって、鉄道用の陸上トンネルとしては日本最長の長さになるのですから。我々が担当する工区も5,310mの長さあり、木部建設を代表するトンネル工事になりますからね。

  • 藤原:木部建設には関門トンネルや青函トンネルの工事にも関わったという誇らしい実績がありますが、それほどになりますか。

  • 大芝:それらに次ぐスケールと言って良いんじゃないかと思います。実は私は、入社してすぐ青函トンネルの工事に加わり、貫通式にも立ち会うことができたんです。さらに今回のような重要なプロジェクトで所長を任されたのは非常に恵まれた経験だし、しっかりやり遂げなければと気を引き締めました。今回の工事については、着工前の2019年10月に機電担当などのメンバー3人と現場に乗り込んで準備を始め、同年12月には着工。進捗に合わせて要員を増やし、今は40人以上を率いて工事を進めています。

  • 藤原:僕がこのプロジェクトに加わったのは2021年の8月でした。大芝所長とは4年くらい前に岐阜県のダムの水路工事の現場で一緒だったので、「大芝さんに呼ばれたのかな」と思いましたね。

  • 大芝:規模の大きな工事で協力会社の作業員も多く、何が起きるか分からない。気心の知れた社員が施工管理に加わってくれれば頼もしい、という気持ちは確かにありました。

#02

これまでの工事の中で 特に印象に残るのはどんなことですか? 特に印象に残るのは どんなことですか?

  • 藤原:このプロジェクトに加わって最初に携わったのがベルトコンベアを設置することだったのですが、それがまず驚きでした。掘削で出る土砂をベルトコンベアで運搬する経験なんてしたことがありませんでしたから。

  • 大芝:たしかに土砂はダンプカーで運ぶことが一般的なので、今回ならではの特色かもしれないですね。ただ、5kmを超えるトンネルともなると、同時に色々作業をしている坑内をダンプカーが行き交うことで危険性も高くなる。そこで今回はベルトコンベアを使ったのですが、私にとっても初めての経験でした。

  • 藤原:通常にはない作業なので、メンバー全員で手分けしながら進めましたよね。私はチームに加わったばかりで、各メンバーの特性が分からない中で分担を決めたり指示を出すことに苦労した記憶があります。

  • 大芝:それでも何とかやり遂げてくれたのですから、藤原君は頼りになりますよ。所長として印象に残るのは、コロナ禍の影響で工事が一時ストップしたことです。そのため、対応を検討するのに2週間以上も工事を止めざるを得なくなったことがありました。そうなると協力会社の作業員たちが他の現場に移ってしまう可能性もあったのですが、全員留まってくれたことは本当に嬉しかったですね。

  • 藤原:そこはやはり大芝所長への信頼ですよ。長く一緒に仕事をしている方たちも少なくなかったですし。

  • 大芝:それなら嬉しいけど、現場のルールや安全行動などの遵守についてきっちり言うタイプなので、厳しい印象を持たれても仕方ないと思っていました。

  • 藤原:「やらなければいけない」とは皆分かっているんです。でも、作業に集中して疎かにしそうなときもあるので、そうすると大芝所長から必ず指摘される。ただ、自分のために言ってくれているとわかっているので、所長からの指示は素直に受け止めてくれるんですよね。

#03

長大な山岳トンネルならではの 施工面で難しさは?

  • 大芝:つい最近乗り切ることができたのですが、トンネルの中ほど、上に400m近く山がそびえる箇所まで掘り進んだときが、これまで施工してきた中での最大の難関でした。山からの「土圧」が想定以上に重く、トンネルを保つのが難しそうになったんです。

  • 藤原:普通は高くても200mほどですから、トンネルに相当な圧力がかかる。対策の検討と実施によって、この難関を乗り越えるまでに4ヵ月近くかかりましたね。

  • 大芝:我々はもちろん、元請けのJV(企業共同体)の皆さんも一丸となって対応してくれたことで何とかこの難局を乗り切りました。自分としては、こうした思わぬ問題が起きても、メンバーの誰一人怪我することなく対処できたことを嬉しく思っています。ただ、これでも工程の半分を終えただけなので、まだ安心はできないですけどね。

  • 藤原:施工の後半に向けて発生しそうな問題がありますか?

  • 大芝:施工上の難題というより、所長としてのプロジェクトの運営上の心配ですね。プロジェクトをほぼ全面的に任されているということは、工事を安全に遂行するだけでなく、収益性もしっかり管理しなければならない。特に今回は工期が長いこともあり、機械系設備のほとんどを新品で入れたのですが、少しずつ劣化し始めている機械もあります。新品に入れ替えれば後半も安心して工事が進められるけれど、コストを考えればそう単純にはいかない。必要に応じて入れ替えるにしても、メンテナンスに一層気を配り、コスト管理もしていきたいと思います。

#04

プロジェクト完遂に向けての意気込みと、 トンネル施工という仕事の魅力をお聞かせください。 プロジェクト完遂に向けての 意気込みと、 トンネル施工という仕事の魅力を お聞かせください。

  • 大芝:何よりも、この工事を無事にやり遂げることが私の責務ですが、藤原君を含めた若い社員たちには、今回のプロジェクトを自分を成長させる良い経験にしてほしいと思っています。これほど大規模で長い期間の工事に入る機会はめったにないので、現場でしか伝えられないものは全て伝えるつもりです。

  • 藤原:確かにこれだけ長いトンネルだと、似たようなトラブルが何度も起こるので、より経験や知識がしっかり身につくと感じます。「前回はこう対応したけれど、今回はこの方法の方が効果的なのではないか」と、試行錯誤することもできますし。

  • 大芝:そんなふうに、自分で考える姿勢を身につけてもらいたいですよね。だから今回の現場では、なるべく皆の自主性に任せるようにしています。自分は後ろから見守りつつ、何か問題が起こりそうなときにはしっかりとフォローする。

  • 藤原:伸び伸びと仕事をさせてもらって、本当にありがたいと思っています。ただ、私も施工管理者として作業員の命を預かっている立場であることを忘れず、常に緊張感を保つよう心がけています。

  • 大芝:そう言ってもらえると本当に心強い。あと、この仕事の一番の魅力としては、トンネルが貫通した瞬間の喜びを味わえることだと思います。ずっと立ち塞がっていた岩壁を突き抜けて光が見えたときの感動は、他の仕事では味わえません。

  • 藤原:僕はこの仕事にロールプレイングゲームのような楽しさも感じています。現場ごとに新しい仲間が集まり、協力しながら難題に立ち向かっていく。そして、皆が最大の力を発揮できるよう、まとめ上げていくのが私たち施工管理の役目ですね。

  • 大芝:木部建設ならではの魅力も伝えておきたいのだけれど、今回のような大規模なプロジェクトを含め、日本各地で色々な現場があることが魅力の1つ。また、若手の人材育成にも積極的なので、経験と知識をしっかり身につけた立派なトンネル施工管理者へと成長できるに違いありません。